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推しの話

反出生主義をめぐるわたしの生活のはなし

ただしい人類滅亡計画 反出生主義をめぐる物語/品田遊

興味深かったので感想を書きました。ネタバレ?してます。ネタバレというか、中身の話を書いています。拙いオタクの感想文です。

 

全能の魔王によって集められた10人の異なる意見を持つ人類が「人類は滅亡するべきか?」を話し合う本、です。

反出生主義に興味はあるけど専門書読むのは大変そうだな〜という私みたいなものぐさな人類にとって、入門編として読むには最適な本だったのではないかと思います。

反出生主義とは「人間は生まれるべきではない(生まれるべきではなかった)」という出生自体に反対する思想。出生について議論しながら道徳や善悪にフォーカスを当てて語っていって、じゃあ正解ってなに?そもそも道徳とは?善悪とは?みたいな、理論を根本から細かくして広げていく感じ?が、哲学ってこういうことなのかな……と思った。いや、まぁ哲学のことは何も知りませんけど。

集められた10人にはそれぞれ色で名前がつけられていて(レッドとかホワイトとか)、細かく見た目のキャラクター像が描かれていなかったのが逆に想像しやすくてよかったです。色の付いた顔無しの人型の人形?みたいなもので想像していました。

 

反出生主義に対してはっきりとした意見を決めかねた状態で読むと、様々な意見を様々な角度や切り口で聞かせてもらえるので、頭がぐわんぐわんになる。でもそれがいいんだと思う。「反出生主義が正しい」という視点だけで書かれている本じゃないから、読む側も多面的に考えられてよかった。

文章自体は読みやすいし、途中途中で『現時点でのまとめ』みたいなページもあるから読者にやさしい作りになっています。だけど、書かれている理論をその都度頭で咀嚼しながら読むのは結構大変でした。哲学書を普段読まないので……。

小説って映像を想像しながら読むから頭に入りやすいけど、こういう理論を展開した文章って、自分のフィルターみたいなところに一旦通しながら、納得できるなぁとか納得はできないけど筋の通った話ではあるなぁとか考えるから、ページ開きながら「う〜ん?」って何度か首を捻っていました。

 

これって、一人の人間(魔王)が、頭のなかで複数の意見(10人の異なる人類)を考えているっていう擬人化的なことなのかな〜と、的外れかもしれないけどぼんやり思った。頭のなかで賛成派と反対派を擬人化させた天使と悪魔が議論してる、みたいなことあるじゃないですか。そんな感じで。

わたしは悲観的なので、割と日常的に「早くこの世界(この場合の世界とは自分自身のこと)終わらないかな」「ころしてくれ〜」「うわ〜しにてぇ〜」みたいなことを心で叫びながら生きているんですけど。こういう0か100にしたがるというか、白黒をすぐはっきりさせたがるというか、何が嫌なのかという詳しい出来事から目を背けてもう全部終わらせよ〜ぜ!となるところを治さなきゃいけないなと思っていたので、物事を細かく切り分けながらきちんと頭のなかで咀嚼して考えたり議論する癖をつけたいなと思いました。

 

 

・道徳的な教えというのは「指針」であって目的地ではない

・みんなが実際に守っているのは『道徳』そのものではなくて『道徳の守り方』だから、反出生主義は道徳には即していても道徳の守り方には反している

 

上記あたりを読みながら、なるほど〜となった。反出生主義を道徳に則っているかという基準で突き詰めていくと一見すれば隙の無い思想みたいに見えるんですよね。

あと、悪い人の裏返しがそのまま「善い人」にはならないところとか、人類難しいな……と思った。物を盗む人とか殺人をする人は「悪い人」だけど、その事象を反転させても「善い人」にはならないんですよね。

 

議論する10人のなかで誰に近いか考えてたけど、たぶんブラックとブルーとグレーをぐちゃぐちゃにした感じで、結局どうしたらいいかは決められなかった。でも人類存続に対して手放しでポジティブな意見は持てないところは、読む前から変わらなかったかも。今まで存続してきたんだからこれからも存続すべき、っていうのはどうなの?とは思う。人類はこれからも存続するべきだっていう決定的な理由が自分のなかでまだ見つかっていないっていうのもある。

 

わたしは「人類を直接出生させる側の性」(この表現であってるのか微妙だな……産む側の性という意味です)なので、環境や年齢的にも出生については人一倍敏感であった……なんだけど(?)、人類をこの世に出生させることってシンプルにめちゃめちゃ怖くない?わたしはものすごく怖いです。このへん、男性ってどう考えているんだろう。正直、夫とはそのあたりのことを詳しく話せていないので分からないのですが、実際に産む側が感じる恐怖は絶対に分かってもらえないよなぁと悲観してしまう。

この「怖い」の理由をまだうまく言語化できないんだけど、本文に書かれていた「自分が感じてきた不幸を背負わせる可能性がある」みたいな部分は罪だと思うので、このあたりが反出生主義に惹かれる理由なんでしょうか。知らんけど。

 

厨二病的な思想で反出生主義にかぶれたくない!けど、自分が人類を出生させることに理由を見い出せないうちは産みたくないんですよね。利己的主義です。自分が納得したいだけです。でも人生ってそうじゃん!?

それに、人間の出生ってあまりにも産む側に負担がかかりすぎだと思いません?社会的にも産む側ばかり負担を強いられているように感じる。人類全員が平等に産む側の立場にたてるようになったとき、初めて納得できる感情が生まれるのかな。

 

あとがきには、「食い違う主張のなかにあるそれぞれの正しさが、どのような水準で成立しているのかを考えてほしい」というようなことが書かれていたので、そういう視点で考えつつ自分の人生にフィードバックしたいと思いました。

 

ラストで世界滅亡させた魔王様が痛快でよかったな。私が魔王でも同じことをやりそう。だって一から世界を作るのっておもしろそうだし。

 

魔王様に議論させられる前に自分なりの結論を出したいけど、その前にあと数年で身体的な妊娠出産のタイムリミットが来るのでどうしましょうね。人間は愚かだな〜。以上!!!!